私たちはいつの間にか、目に見えない「悲しみ」という荷物を背負いすぎてはいないでしょうか。
「まだ歩ける」「これくらい平気だ」と自分に言い聞かせ、強がることが美徳だと思ってしまう。
けれど、本当に必要なのは、その重さを認め、自分を労ってあげる勇気かもしれません。
今回は、背負い続けた荷物を下ろし、再び空を見上げたある旅人の物語をお届けします。
目次
ポエムと動画:『悲しみの労い』
悲しみが重くのしかかる
その重さを 「よく耐えたね」って
自分に語りかけて
優しく下ろしてあげる
短編物語:『星屑の荷物と、銀色のベンチ』
人生の重荷を背負い歩み続ける青年リュカが、「もう一歩も歩けない」と感じた時に辿り着く特別な場所での出会いと心の変化を描いています。
テーマは「悲しみの労い」。
重い過去を抱えながらも、前に進む人間の内面と癒しを表現しました。
その街道の果てには、不思議な「ベンチ」が置かれていた。そこは、世界中の旅人が「もう一歩も歩けない」と思った時にだけ辿り着ける、銀色の森の入り口だった。
青年リュカは、巨大な袋を背負ってその場所に辿り着いた。袋の中には、彼がこの数年で経験した喪失、後悔、そして誰にも言えなかった孤独が詰まっていた。それはリュカの体よりも大きく、ずっしりと重く、彼の歩みを一歩ごとに地面へ沈ませていた。
「重いだろう、それは」
ベンチに座っていた老人が、穏やかな声で言った。リュカは肩で息をしながら、袋の紐を強く握りしめた。
「……でも、下ろすわけにはいかないんです。これは、僕が背負うべき責任ですから」
老人は微笑んで、自分の隣の席をポンポンと叩いた。
「責任か。立派なことだ。だがな、その重さは君が『今日まで生きてきた証』でもある。君は、その重さに耐えてここまで来たんだよ。誰に褒められずとも、君の肩は、その重さをずっと知っていたはずだ」
リュカの目から、不意に涙がこぼれた。
誰かに「下ろしていい」と言われるよりも先に、自分の肩が「痛かった」という事実を、初めて認めた瞬間だった。
「よく、耐えたね。本当によく、ここまで運んできた」
老人の言葉が、温かい風のようにリュカの背中を撫でた。
その瞬間、不思議なことが起きた。あんなに重かった袋の紐が、ふわりと解けたのだ。リュカが恐る恐る袋を地面に置くと、中から溢れ出したのは、ドロドロとした闇ではなく、鈍い光を放つ無数の「星屑」だった。
悲しみは、消えてなくなるわけではない。ただ、重い「荷物」から、静かな「夜空の一部」へと姿を変えたのだ。リュカの肩から、数年ぶりに力が抜けた。彼はその銀色のベンチに深く腰掛け、軽くなった自分の体を感じながら、静かに目を閉じた。
【付属解説】物語を読み解くヒント
- あらまし
重い悲しみを背負い続けた旅人が、自分の努力と痛みを認める(労う)ことで、その重荷を手放し、再生への休息を得る物語。 - テーマ
自己肯定、悲しみの昇華、休息の重要性。 - 重要ポイント
「悲しみを捨てる」のではなく「労って下ろす」こと。自分の痛みを一番に分かってあげられるのは、自分自身であるという視点。
Q&A
まとめ
人生の苦しみや悲しみという「重い荷物」を背負って歩む人が、その重みを認め、受け入れる。
それによって、初めて心が軽くなり、新たな希望を見出すということを、物語で表現しました。
人は誰しも、表面からは見えない深い悲しみや悩みと持っているのが常ではないでしょうか。
でも、その受け止め方によって、人生はまたひと味違ったものになるのかもしれません。
付録:楽曲『静寂の祈り(Prayer of Silence) ver1,2』
楽曲『静寂の祈り』を聴いて、悲しみや悩みをサラッと洗い流していただけたら幸いです。
日本語版
静寂の淵に咲く
一輪の白い花
あなたのその瞳に
映る影をぬぐいたくて
風が運ぶ切なさ
星が零す願いを
両手に抱きしめて
ひとり、ただ見つめてる
©MarieZen
英語版
A single white flower blooms at the edge of silence,
Yearning to wipe away the shadows reflected in your eyes.
Embracing the melancholy carried by the wind,
the wishes spilled from the stars in both hands,
Alone, simply gazing.
©MarieZen













